石心会グループの国際活動
今回は、石心会グループの海外活動や外国籍人材について、川崎幸病院 川崎大動脈センターとオリーブにお話を伺いました。
世界トップレベルの技術を世界へ発信 川崎幸病院 川崎大動脈センター長・大動脈外科科長・大動脈外科部長 大島 晋
今回は、川崎大動脈センター長・大島晋医師に、海外活動を通じてわかった事や今後目指すことについてお話を伺いました。
コロナ禍後から、劇的に増えた学会での講演
海外の学会へは、コロナ前にも頻繁に参加していましたが、コロナ後は劇的に増えました。2022年11月~2023年4月まで川崎大動脈センターにフランスの医師・JACQUES PIERRE TOMASI氏が研修にきていたのですが、TOMASI医師が自国に戻ったあとに、フランスの学会に招待され、そこで講演をしたことが大きなきっかけになったと思います。
そのフランスの学会で知り合った医師が、今度はチュニジアの学会に招待していただきました。チュニジアは医療資源が限られていることもあり、特に大動脈疾患の治療に関して多くの課題を抱えていました。その中で、私たちが日本で行っている開胸手術の技術を現地の医師たちに講演をしたところ、大変興味を持ってもらうことができました。これまで様々な国に訪問しましたが、訪問して一番印象に残った国になりました。

Consultant Univ. Hospital of Rennes
Dr.JACQUES PIERRE TOMASI (France)

講演が増えたきっかけとなったフランスでの学会の様子

チュニジアの学会で講演する大島医師
海外の国々に共通する医師達の熱意と学びの意欲
台湾の台中栄民総医院とは、2017年に国際交流協定(MOU:Memorandum of Understanding)を締結しています。この病院は、病床数が3,000床、60ものオペ室を有しています。日本の病院と比べてその規模に圧倒されましたが、この規模の病院でさえも、大動脈疾患の手術の質を見てみると、まだまだ改善の余地がありました。当センターの技術力を非常に高く評価してくださったことで、自分達の技術力の高さを実感した協定締結となりました。台湾では、台中榮民総醫院の他、台北や花蓮の病院ともMOUを締結しています。
台湾だけではなく、様々な国が当センターの技術力を認めてくださって、多くの講演や手術の実演を行っています。どの国でも共通しているのは、医師たちの熱意と学びへの意欲です。
例えば、ヨルダンの医師は、2023年に胸腹部手術を15件行ったものの、成功率が非常に低かったそうなのです。「どうしたら成功率が上がるのか教えてほしい」と、相談をしてくれたことがとても印象的でした。私たちの手術技術が役に立つと感じてもらえることが何よりの励みになります。
また、韓国では、ソウル大学盆唐病院の心臓血管外科医である朴医師という、韓国内で非常に尊敬されている方がいます。彼は日本が大好きで、日本語も話せるほどです。彼とは学会などで度々会いますし、今年の11月には川崎大動脈センターにも来訪されます。川崎大動脈センターの技術を高く評価してくださっていて非常に嬉しいですね。若手医師の育成についてのプレゼンも依頼されました。
現地の活動だけではなく、当センターに研修のために来日を希望する医師達も増えてきたことから、彼らの意欲に応えるべく、常に3人の外国人医師を受け入れる体制づくりと、滞在中の住居費や食事を提供し、研修に集中できるように環境を整えました。川崎大動脈センターのホームページにも国際研修活動の報告をしていますので、是非ご覧いただければと思います。

韓国医師の朴氏と川崎大動脈センター 大島医師

2017年に国際交流協定を締結した台湾の台中栄民総医院
世界中の医師達とつながり、一人でも多くの命を救いたい
海外活動を通して感じるのは、技術だけでなく、人とのつながりが非常に重要だということです。コロナの影響で海外との交流が一時的に減少しましたが、最近では再び増えてきており、前述のフランス、チュニジア、台湾、韓国だけでなく、中東のヨルダンやイエメンなどからも関心を持ってもらっています。この10月には、ウクライナの学会(WEB)に参加します。また、アラブ諸国の学会からも招待があり、来年に参加を予定しています。
このような海外での活動を通じて、私自身も多くのことを学んでいます。世界中の医療現場を見て回ることで、自分たちの技術の素晴らしさを再確認すると同時に、まだまだ学ぶべきことが多いと感じます。また同時に、朴医師がいる韓国・ソウル大学盆唐病院のように、我々よりもアクティビティが高く症例数を増加させている病院の様子を聞き、我々ももっと症例数を伸ばすことを考えないと、すぐにアジアでトップの座を奪われてしまうかもしれないと強い危機感を持ちます。
今後も、積極的に国際交流を継続し、世界中の医師たちとのつながりを大切にし、我々の川崎大動脈センターも進化をさせながら、世界の大動脈治療の発展に貢献し、一人でも多くの命を救いたいと思っています。
現地まで積極的に出向き海外人材を採用。採用の実情と現場のメリット・デメリット オリーブ施設長 市川 明美
今回は、オリーブの市川施設長に、海外人材採用の実情や現場のメリット・デメリットなどを伺いました。
※特定技能:国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度。日本への在留が可能となる。
海外人材の採用に至った背景
2000年頃から、介護業界では「2025年問題」による人手不足が懸念されており、特に介護職は重労働で低賃金とされ、応募者が減少していくことへの危機感が高まっていました。2009年に事務長に就任し、面接や採用業務に携わるようになってから、応募者の減少を肌で感じるようになり、将来的には海外からの人材に頼らざるを得ない時期が来ると考え、情報収集を始めました。
2017年には海外スタッフの採用活動を始めました。当初は、中国・大連への訪問を通じて現地看護師の採用を試みましたが、残念ながらこの時は採用には至りませんでした。
そのあと、《技能実習※》での採用を目的に、2019年1月にインドネシアへ渡航し、ジャカルタとスラバヤで45名の面接を実施し、5名をオリーブに採用することが出来ました。オリーブで3年間技能実習生として勤務をしてもらい、その期間が終了すると3名が帰国、残った2名は技能実習から就労資格を持つ特定技能へと移行できたものの、最終的には退職となってしまいました。
2021年には《特定技能》での採用を始めました。コロナ禍もあり、現地での採用活動が困難だったためオンラインでの面接となりましたが、ネパールで10名のうち3名が内定、インドネシアで10名面接して3名が内定しました。翌年にもインドネシアから別の特定技能を採用することが出来ました。ただ、採用まではよかったのですが、《特定技能》は就労資格を持つため、せっかく採用しても、労働条件が良い施設への転職や結婚などで退職が続いてしまいました。
また、これまでのインドネシアの人材確保ルートは、コロナの間に、他国にいい人材が流れていってしまったようで、年々人材の質が落ちていました。 危機感を感じ、少しでもいい人材を採用するために、2023年には再びインドネシアへ渡航し、新しいルートを開拓。23名の面接をジャカルタで実施して、6名が内定しました。そのうち日本語技能試験N4に合格した3名が採用され、2023年12月と2024年3月に入職。また、2023年にはミャンマーにも渡航し、ヤンゴンで70名の面接を行い、9名が内定し、2024年5月に入職しました。
2017年から始めた採用活動ですが、定着させるには6、7年かかりました。いい人材をとるためには、多くのルートを持つことの大切さを感じています。採用活動のための渡航時には新たなルートの開拓、人脈を広げるための行動も忘れてはならないと思っています。
※技能実習:就労を目的としない出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るための制度
採用後の課題と成功事例
文化や監修の面でいうと、採用にあたっては国ごとに異なる文化や習慣を理解・対応することが必要です。インドネシアやネパールのスタッフの場合、宗教的な信仰心が強く、お年寄りを敬う姿勢があるのはいい面でしたが、時間にルーズで、自己主張が強いという特徴が見受けられました。また、日本では好まれない、母国では普通の行為である貧乏ゆすりや舌打ちなどもあります。ミャンマーのスタッフは、集団行動が苦手ですし、ネパール人スタッフはおっとりして、歩くのが遅いことから、だらけているように見えることがありました。母国での普通が日本では普通ではないことを教える事はなかなか難しいことでした。
日本語力や業務遂行の面においても課題はありました。日本語学校で言語や文化を学んできたとしても、個人差があり、現場では忘れてしまうことが多いので、業務の指示が理解できていない場合でも、「分かりました」と答えてしまい、トラブルになったケースもありました。
定着は大きな課題です。言語の壁から生じるコミュニケーションがとれず、業務が覚えられない事から、短期間で退職するスタッフも少なくありません。特に、業務を独りでこなせるようになるまでに1年以上の時間がかかることが多く、その後すぐに転職や帰国するスタッフがいるため、長期間の就業が難しいという現実があります。

ミャンマーの皆さん

実習の様子
今後の展望と取り組み
外国人スタッフの採用には、経営上のメリットとデメリットがあります。最大のデメリットは、採用コストが高額であることです。 技能実習生の場合、OJTを通じて技能を移転する制度であり、最低でも3年間の実習期間が求められます。その間の組合への月額管理費、渡航費や寮の備品代、研修センターの費用などが施設負担となります。また、特定技能「介護」では、基本的に個人負担が求められるものの、渡航費の一部を施設が負担しないと応募者が減少する可能性があります。寮の家賃は給料から天引きされますが、アパートを借りる際の諸費用や更新手数料などは施設が負担する必要があります。また、支援会社への月額支援費や、雇い入れ時の紹介料など、施設にとっては大きな負担となります。
しかし、多くのメリットもあります。海外スタッフが入居者に笑顔で接してくれるため、フロア全体がとても明るくなりました。日本人スタッフにとっても、海外スタッフに業務を教える際に、自身の業務理解を深め、コミュニケーション能力が高まる機会になりました。
また、特定技能のスタッフは転職が可能ではあるものの、業務が独りでできるようにならなければ難しいことから、長期間での就業が見込めるという点もメリットです。
実際に海外スタッフを採用・育成して感じることは、単に業務をこなせる人材を確保するだけでなく、長期的な視野での人材育成と定着をさせ、長く就労してもらうことが重要だということです。日本人の人材が減っていく中、法人グループ全体としても、海外からの人材を効率的に採用し、長期育成・キャリアップさせるシステムの構築が必要なのではないかと考えます。
オリーブでは、今後は、採用したスタッフを育成し、介護福祉士資格を取得させ、リーダーとして後輩の指導を任せる方針です。また、希望者には看護師資格の取得を支援し、さらなるキャリアアップを目指してもらうことも視野に入れていきたいと考えています。
現在は、外国人スタッフの採用や研修は外部の支援会社に委託していますが、長期的には法人グループ全体で海外人材の育成・派遣をする機能をもつことができれば、費用削減や採用活動も効率的に行うことができると思います。海外人材の効率的な採用は、今後の人材不足を解決するカギになるのかもしれません。
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※お申し込みは石心会グループ職員の方に限らせていただきます。
※申し込み締め切り 2024年12月31日(火)

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